この薄汚れた世界で 『LOGAN/ローガン』

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 強烈な死の臭いがする。ローガンは冒頭から最後まで死の臭いが漂う。

アメコミ映画を観ているのか、X-MENシリーズを観ているのか分からなくなるような始まりだった。

物語冒頭、ローガンの車を壊そうとするチンピラに反抗するローガンの姿から始まる。

その姿は、足をふらつかせ身体がヨロヨロとして、すでに死期が近いように思えるほど衰弱している。

彼はローガンでそしてウルヴァリンである。しかし、その衰え方は見るに耐えない。チンピラに「車だけはやめてくれ」と言い、放たれた銃弾を自身が受ける。そして、力を振り絞ってチンピラを殺す。

そこには今まで観てきたような、ウルヴァリンのヒーローとしてのかっこよさなどは無い。だたそこで殺しが行われたという事実が残った。

 2029年、ミュータントはほとんど絶滅し、生き残ったローガンはプロフェッサーXを介護しながら生活している。ローガンはリムジンの運転手として働きなんとか生計を立てている。

世界は変わってしまった。すでにミュータントの問題など過去の出来事になっていた。

人類はミュータントをどうしたのか、明確に描かれていない。しかし、背景をちらつく悲惨な出来事、そして世界から漂う死の香り。この薄汚れた、乾ききった世界に、衰えたローガンとプロフェッサーは取り残されている。

そんな彼らと、ミュータントとして作られた少女ローラを組織が追ってくる。

組織は今までの敵(ヴィラン)に比べるととても小さい。しかし、それはどこよりもドス黒い吐き気を催す邪悪である。

 ローガン、プロフェッサー、ローラと血と暴力の旅の果てには終わりがあった。

その終わりは、どこか世界の終焉を観ているようで非常に辛かった。ローガンの物語は終わってしまったが、ローラはこれから歩み始める。彼女が歩き出す物語。そして、生き残ったミュータントである子供たちはカナダへと歩んでいった。

 正直、観終わって予想以上にダメージをくらってしまい、シリーズのファンとしてはかなり辛い映画だった。

ただし、ローガンであるウルヴァリンを演じたヒュー・ジャックマンには心からの感謝とお疲れ様でしたという気持ちでいっぱいである。

17年間、僕のヒーローを演じてくれてありがとう。これからも心の中で永遠のヒーローであり続けます。

 

『スプリット』あたなの世界と私の世界

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シャマシャマシャマラン、シャマシャマラン、シャマランの新作です。

ネタバレしてます。

 

・あらすじ

 謎の男(ジェームズ・マカヴォイ)に拉致されて監禁された女子高生3人組。男は23の人格を持っていた

多重人格(解離性同一性障害、DIDと呼ばれることも)を患う人物であった。

はたして3人は脱出することが出来るのか、そして彼の持つもう一つの人格が…

 

 M・ナイト・シャマラン監督の最新作。「シャマラン完全復活!」といったキャッチコピーを見た時は「シャマランはいつも通りじゃないのか」と思ったが、世間的な評価はあまりよろしくないようで。ってか前作『ヴィジット』でも「復活!」なんて言われていたと思うが…まぁそれは置いとくとして、本作はシャマランによるシャマランによるシャマランの作品である事は間違い無いだろうし、僕はシャマランの作品に対しては「シャマランなら楽しんでみる」という姿勢を持って観ています。

 

・彼の世界 

ジェームズ・マカヴォィ演じるケヴィンという男は解離性同一性障害(以下DID)であることは物語の序盤で分かりますね。

彼はいくつもの人格を持ち、現在は主に3人の人格が入れ替わっているようだ。

(追記:少し勘違いをしていました。最初に出てきた人格の男が「デニス」そして女性の人格である「パトリシア」9歳の少年の人格が「ヘドウィグ」であり、先生の前で装っていた人格が「バリー」であり、物語は主にこの4人の人格で進んでいきます)

かかりつけの精神カウンセラー「フレッチャー先生」の元へ何度も足を運ぶ彼ですが、その人格は「デニス」であると最初は示される。

しかし、後に、「ケヴィン」を装った「デニス」である事が分かります。「デニス」は女子高生3人を誘拐した人物であり強迫性障害な面がある。

この辺りのジェームズ・マカヴォイの演技は素晴らしい。フレッチャー先生との会話の中で人格が入れ替わるシーンがあるが、1カットでその入れ替わった人物をマカヴォイが演技をしています。

さて、ではなぜ女子高生を監禁しているのか。というと、実はもう一人の人格「ビースト」がもうすぐ誕生して、不純な若者を拉致して餌にするからだ。

不純な若者と言いましたが、これには例外があるようです。それは後程。

フレッチャー先生は彼が女子高生を監禁していることは知らず、物語の後半で分かる。そして「ビースト」なる人格もすこし懐疑的な印象。しかしそれも受け入れてカルテルに書いてる場面が映されます。基本的に彼を「理解しようとしている」人物である事ではないでしょうか。

 

・私の世界

 拉致されて監禁された女子高生3人組はケイシー、マルシア、クレア。

本作のもう一人の主人公である人物はケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)だ。

彼女だけどこか異質な雰囲気を出している。拉致される前も、マルシア、クレアから「クラスで浮いている」とか「わざと居残りされるためにイタズラしている」といった事が何気ない台詞で提示されます。そういえばこの映画、冒頭はケイシーの顔が印象的に映し出されていた。その瞳はどこか別の世界に生きているような、そんな雰囲気。

そんな彼女は、拉致されてパニックを起こしている他二人とはどこか違う雰囲気。

厳密には他の二人と同じく不安と恐怖心はありますが彼女の世界は違う。

それは後に、彼女が叔父から虐待を受けていたことが明らかになるからだ。

僕は本作を観ていて少し前に読んだ、高橋和巳著『消えたい、虐待された人の生き方から知る心の幸せ』という本を思い出した。

虐待を受けて育った子供は、他の一般的な家庭で育った人とは別の世界を生きている。厳密に言うと他の人ととの物事のとらえ方だとか、生き方が違っていると書かれていた。

たとえば、「どうすれば上手く相手を怒らせないように行動するのか」だとか、「時間」に対する考え方、ある時期まで生きて自分の決めた時期になったらこの世界から「消えてしまおう」(「死にたい」ではなく「消えたい」)や、とある患者からの発言を本文から抜粋すると

「今までは、人生をテレビでみているみたいで、コントロールできた。見たくもないものはスイッチを切るか、切らなければボリュームを下げた。そうすれば、目の前に動画が流れ私はただ眺めているだけですんだ。親の望んでいない自分は『処分される』と思ってきた。自分がいなかったので、私と家族と家の周りの風景はすべて客観的だった。

だから、私は周りには興味がなかった。興味がある振りはできるけど、根本的に興味がない。『なんでそんなに冷静に淡々と話せるのか』と、よく人から言われる。私は逆に、なんでみんなそんなに熱心に人生を語れるのかと思っていた」

受け入れがたい現実、つながりたくない現実から逃れるために解人症が起こる。あるいは、前向きに生きていこうとする「主体性」が途切れる時にそれが起こることもある。 

また、「死にたい」ではなくなぜ「消えたい」なのかというと

「死にたい」は、生きている、を前提としている。

「消えたい」は、生きたい、生きている、と一度も思ったことがない人が使う。

「死にたい」と思うには、その前提に、本当はこう生きたいという希望や理想がある。あるいは、人生のある時期、楽しく生きてきたという経験がある。でも、何かの事情で、自分が望んできた人生が実現できないと分かり、その時に人は死にたいと思う。

中略

一方、虐待を受けてきた人の「消えたい」には、前提となる「生きたい、生きてみたい、生きてきた」がない。生きる目的とか、意味を持ったことがなく、楽しみとか、幸せを一度も味わったことのないひとから発せられる言葉だ。今までただ生きてきただけで、何もいいことが無かった、何の意味もなかった。そうして生きていることにつかれた。だから「消えたい」…

  僕は映画を観ていてこの本がずっと頭を過っていた、もちろん「虐待」が本作の完全

なメインのテーマである…とは思わない。

ただし、ケイシーは叔父から虐待を受けている事が分かる。そして、クラスからの孤立、家に帰りたくないあまりの「わざと居残りをする」幸い、彼女自身はまだ精神的な症状は出ていない、ただし、彼女たちを監禁したケヴィンはDIDである。

・彼の世界と私の世界

物語は、最終的にケヴィンの「ビースト」の人格が解放され世界へ放たれる。

ケイシーは一人生き残る。それはなぜか、「ビースト」である彼の口から「お前は違う(すいません、この辺曖昧でした」的な台詞を言われ見逃される。彼女は監禁から解放され、また同じ世界へと帰ってゆく。「ビースト」から観た「不純な若者」とは違う彼女。

しかし、最後の彼女の顔、瞳には今までとは違う何かがあるように思えた。少し違った世界の見え方が彼女に芽生えたのではないか。叔父との接し方が完全に変わるわけではない、だけど彼女もまたこの世界で生きてゆくのだ。

 本来交わる事の無かった人物が、あるきっかけで出会い、もしかしたら彼は私だったのかもしれない、彼は彼女だったのかもしれない。お互い、住んでいる世界は同じであった、だけど彼は新しい世界へと解放された。

 

・まとめ

虐待を受けた人物を美化している作品とは思わない。

彼のやった監禁は立派な犯罪だ。しかも「ビースト」は残虐な人喰いの殺人を犯している。それでも、許されないことをしたが彼の「解放」は彼にとっての救いだったのかもしれない。

本作は、私はこのような側面から観てしまいった。様々な見方があり、人それぞれ思うところもあるだろう。音楽の使い方や、撮影の素晴らしさ…等は僕はあまり詳しくないが、ズンズンといった音の使い方はとても良い。そして、配管だけの廊下(道?)を走る少女の場面は音も相まって素晴らしいシーンだと思った。

そして、本作驚く展開が、なんとあの『アンブレイカブル』と同じ世界であり(最後に「ブルース・ウィリス」のカメオ出演は驚いた)そして『スプリット』と『アンブレイカブル」を合わせた続編『Glass(原題)』が2019年に公開予定だそうだ。まさにシャマラテック・ユニバースの誕生である。シャマラン自身、過去の作品と立ち向かう姿勢も感じて、今から楽しみである。そして、『スプリット』は僕の大好きな『サイン』と並び「特別な一本」になった。ありがとうシャマラン。あんたすげぇよ。

 

参考文献:高橋和巳『消えたい、虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』awesomeでawesomeなvol.2

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 ※感想はネタバレを含みます

 「最高な映画がやってきた」と一作目を観た時僕は思った。

シネコンを出て真っ先にCDを買ってチャリンコを漕ぎながら映画を思い出し涙を流して家に帰ったのはもう3年も前になると思うと、時間が経つのが早いと思い泣けてくる。

続編である『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(邦題がどうしても許せないので、ここでは『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーvol.2』とかvol2として書きます)が公開された。そんな続編を、IMAX3Ⅾ字幕版と2Ⅾ字幕版を初日に鑑賞。

大傑作でありまたしても「特別な一本」として僕の胸の中に残る大切な作品にななった。

 最初に1回観た時は、劇中でガーディアンズのメンバーが色んな星に行ったり、色んな宇宙人と戦ったりと、そういう話ではないので少し期待していたのとは違ったかなと思う所は正直…あったよ(まぁそれはスタートレック観ればいいのではとは思いますが)

「初めて観たフレッシュな気持ち」はかなり薄れてしまった気がする、ただし、本作が「父親」への向き合い方と「家族」へ向き合い方、そして他者と繋がりを持つ事はどうういうことか?という問いを、温かく僕の心へ投げかけてくれた気がしたので、また別の意味で「特別な一本」になった。

 突然僕個人の話だが、ここ数年「家族とは何だろう」と「父親とは何だろう」って思いを考えて生きている。今も。自分の出来事は詳しくは書かないけど、血の繋がった「父」という存在をどこまで許せるのか…というモヤモヤとした思いが続いるのだ。

話を映画に戻すと、本作ではそんな血の繋がった「父親」が突然主人公ピーター・クィル(以下ピーター)の元に突然現れる。

前作でピーターは、実は宇宙人とのハーフである事が判明し、この宇宙のどこかに血の繋がった宇宙人である父親がいる事が分かる。

父親が現れたことで、ピーターはどう動く?そしてチームはどうなる?というのが本作のお話だ。

「特別な一本」なのは、先ほど書いた「父親についてモヤモヤしている時期」と重なったからかもしれない。

僕にはピーターと父親の関係、そしてその父親を乗り越える事でその先にある「家族」や「人生」についても描いているように思えた。

  ピーターの父親エゴ(カート・ラッセル)は宇宙人であり、神にも近い存在であることが判明する。

そんな相見えない存在が自分の父親であると判明した時、ピーターはどう動くのだろうか。

 ピーターは、血の繋がった父親と分かりうことが出来た瞬間を本作は印象的な「キャッチボール」のシーンで見せてくれる。

でも分かり合うことが出来た人物が、自分と違う思想であり、自分が「倒すべき悪」だと思った瞬間、たとえ血の繋がった父である人物でも「許さなくてもいい」という決断をする。

主人公ピーターにとって気持ちに切なさもあるけど主人公としての成長し、精神的にも成長した瞬間なのではないか。「実の父親を殺す」というテーマは昔から語られている映画のテーマであるが(直接殺すとかじゃなくてある時点で乗り越えたりすことで)

血の繋がりだけではなく自分とは違うけど、どこかで一致する部分と特別な出会いであった「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」と、宇宙で自分が大きくなるまで育ててくれた「ヨンドゥ」という存在はピーターにとっての今までの、そしてこれからの「家族」そのものであり仲間であるんだと本作は改めてそれを考え直す作品でもあった。

父親という呪い」は解けないかもしれない、だけれどその隙間を埋めてくれる人はどこかにいる。

「何も血の繋がりだけが全てではない、許せない事だってある」ということ、そして「繋がりはふとした瞬間に現れるかもしれないし、途切れるかもしれない、でもその繋がりを大切に思える時期が来る、そしてこれからも大切な繋がりがきっと来る」という事を考えさせてくれる作品なのだと思った。

ちょっと考えすぎかもしれないが、ジェームズ・ガンの作品には「温かさ」と「優しさ」があるはずだ。

それが本作では120%発揮されたあったけぇ作品だと僕は思う。

awesomeで特別な一本をありがとう。

 

4月はドニー・イェン祭り!! ドニーさん作品を色々観た

 『イップ・マン』シリーズを観てからドニーさんの事が頭から離れない。

夢にドニーさんが出てきたり、ドニーさんの幻覚を見たり、気づいたら駅のホームで詠春拳の構えをして不審者扱いされたり、とにかくドニー・イェンという俳優の魅力にノックアウトされてしまいました。

なので彼が出演している作品を借りられるだけ借りて、自宅で一人ドニーさん祭りを行いました。こうして僕の4月は終わりを迎えた。

まだ観ていない作品もありますが、『SPL/狼よ静かに死ね』『ドラゴン危機一髪97』『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』を鑑賞しました。

一つ一つ感想を書いていると長くなりそうなので簡潔に書きますが、結論から言うとどの作品も面白かったです。

・『SPL/狼よ静かに死ね』

こちらの作品は僕のツボに入り、とにかく家族、仲間との死別、そして友情…といった大好きな要素にドニーさんやサモハン・キンポー、そしてウー・ジン(荒木飛呂彦)のウルトラアクションとドラマのバランスが絶妙だと思いました。

アクションシーンも凄く見やすくて、やっぱりカメラの位置って重要なんだなーって思いましたね。

ところでウー・ジンさんは見れば見るほど漫画家の荒木飛呂彦さんそっくりで、「荒木先生が人殺しまくってる!」という錯覚に陥りました

荒木先生も超人なので実質ウー・ジンといってもいいのかもしれませんね(さすがに失礼か)

ところで、DVDが今とんでもない価格になっているのでどうにかなりませんかね。

 

・『ドラゴン危機一髪97』

監督・出演・脚本・アクション監督・製作総指揮をドニーさんが担当したドニーさんによるドニーさんの映画でした。とにかくアクションが早い!でもちょっと見づらかったかな。でも若いドニーさんと謎の老けメイク(バレバレ)が観れたのでよし!

 

『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』

これはとんでもない映画でした。

ツイッターにちょっと感想書いたので引用しますが

とにかくファッサファサ!前髪ファッサファサの主役3人が繰り広げるハイパーアクションと前髪ファッサファサの競い合い、そして髪の毛をファサフサァさせたドニーさんがおいしい所を持っていくとんでもアクション映画でビックリしました。

見どころは満載なのですが、なんかよくわからないエフェクトがかかって、仮面ライダーを観ているようでした。

吹替で観たんですけど、大塚明夫さん声のラスボスなんて勝てる気がしない…しかもマントを使ったファイナルベントパンチやオーラーを発生させた超凄い腕で殴りまくるアクションは「なんて強さだ…」とつい見ながら呟いてしまいました。

まぁドニーさんの前髪ファッサファサ主役補正で勝っちゃうんですけど。

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観終わってから作品のビジュアルを観て爆笑しました。ドニーさん前髪長すぎて誰ですか。

・まとめ

僕は『イップ・マン』シリーズで彼を追っかけ始めた(正確にはトリプルXローグ・ワン)なので抑えた演技、そしてにニコニコして落ち着いた雰囲気を出している俳優さんなのかと思っていましたが、過去作を観てみるといわゆるオラオラ系のキャラクターが多いですね。それも魅力的ではあるのですが。

とにかく自分を「どれだけかっこよく見せるか」にこだわっていたのではないでしょうか。ちょっとズレている所もありますが基本かっこいいしとにかく作品によってアクションのバリエーションが豊富なので観ていて飽きません。あと作品ごとに脇を固める俳優さんもまた魅力的なので、香港アクション映画って素晴らしいですね。

最近は韓国や中国の映画も気になっていて積極的に観るようにしているので、自分の観るジャンルが広がってとても嬉しいです。

私のイップマン、あなたのイップ・マン 『イップ・マン 継承』

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 久しぶりの映画感想。書きたい映画は何本かあるけど、まずはイップ・マンから。

あらすじは書かないが、ネタバレはしています

 初めに、恥ずかしながら『イップ・マン』というシリーズとドニー・イェン(以下、ドニーさんと呼ばせていただきます)という人物について知ったのはつい最近。

宇宙最強であるドニーさんの存在は情報としては知っていたが、彼が出演している作品を観たのが『ローグワン スター・ウォーズ・ストーリー』が初めてで、続く『トリプルX再起動』(これは最高の作品)で「凄い超人だなぁ」という認識だった。

その後、幸運にも池袋の新文芸座で上映された『イップ・マン』二部作上映のお誘いを受けたので、新作公開前ということで観てまいりました。

結果、見事に打ちのめされた(お話とドニーさんの魅力!!)

今更言うのも恥ずかしいけど、オールタイムベスト映画に入れたい作品であり大切な映画になった。お誘いいただいた事を今でも大変に感謝しています。

そんなドニーさんを好きになった新参者ですが、初日に『イップ・マン 継承』を観てまいりました。

 ・生命、家族

先にアクションについて述べたいが、先に本作の一番重要だと思ったテーマについて

本作で描かれているテーマは「生命」であって(インタビュー等でも書かれています)さらに家族の話である事が本作のテーマであると思う。

谷垣健治さんによると一作目では「生存」二作目では「生活」が描かれているとのこと。

僕が前二作を観て思った事は、イップ・マンという人物が中国においてどのような影響を与えていき、彼とその周囲の人物の人生を描いていたと思う。そこに「生存」と「生活」というテーマが上手くリンクしていると思う。

そんな三作目である『継承』では「生命」が描かれると同時に、イップ・マンの「家族」の描写がとても繊細かつ丁寧に描かれていた。

これは前二作でも描かれている事ではあるが、より家族についてクローズアップしており、言ってしまえば前よりもミニマムなお話になったのかもしれな。

しかし、そのテーマを三作目で描く事が重要なのだと思う。前二作で登場した家族の描写の積み重ねがあるから本作はこのテーマで描く事の重要性を感じた。

このシリーズは彼の人生なんですよね。だから愛する妻と共に送るかけがえのない時間は必要でしょう。今作では、そんな妻が癌で余命がわずかと宣告されますが、そこでイップ・マンは妻と、家族と最後までと共に人生を謳歌します。今まで詠春拳の修行や対戦で家族と共にする時間が少なかった彼が、妻と笑って踊ったり、食事を食べさせたり…(この辺は一作目を思い出して号泣)

妻も彼と共に生きてきたからこそ、そっと背中を押すように「あなた私のイップ・マン(うろ覚えですいません)」という優しさと信頼を込めた言葉が言えるのだと思う。

そんなかけがえのない時は、彼にとって人生の忘れられない時間になったのではないだろうか。

最強の男が唯一敵わなかったのは妻の病。やりきれない思いもあるが、それでも彼は前に進むんでよね。進むというか「自分が今やるべき事を気づく」とでも言いましょうか。

でも、妻が充分夫との時間を謳歌した時「でもあなたのやるべきことがある」という思いで、彼の詠春拳がいかに大切かを理解しているはずです。だから「私のイップ・マン」という台詞には泣かざるをえなかった…

ちなみに、「イップ・マン」の家族だけではなく、「マックス・チャン」や「マイク・タイソン」の家族も登場します。なので、彼らの家族もまたこの物語には欠かせないテーマであると思います。

・工夫されたアクション

シリーズで重要なアクションもまた、前二作よりさらに工夫されていたと思う。

前2作よりは見せ場は少ないけど

毎回驚かれれるのが、そのアクションシーンの見やすさ。どこで、誰が戦い、どのような動きなのかが凄くわかりやすい。カメラをどこに置けば見やすくなるのか計算されているのでしょうか。

本作では一見地味に見えるが、高低差のある広場、エレベーターからの階段といったアクションも必見

エレベーターから階段の一連のアクションは、ドラマとアクションが上手く嚙み合って本作のベストシーン。

限定された空間でのアクションは見やすく、少し広い場所でのアクションも無駄に広いだけではない絶妙なバランスがアクションシーンを見やすくしているのではないでしょうか。

 本作でイップ・マンが戦うキャラクターも見事

マイク・タイソンとの闘いは、限定された空間と時間でどちらも引けを取らない熱い戦いであり、ラストバトルでのマックス・チャンとの詠春拳VS詠春拳は瞬きするのを忘れるほど見入ってしまいました。

・まとめ

僕は三作観て、どの作品も素晴らしいと思いました。本作は特にドラマとアクションのバランスがシリーズで一番良かったと思う。

家族なんてベタベタなテーマかもしれませんが、僕はこういうお話に弱いんだなぁ…

しかもシリーズの積み重ねがあるからこそ、より重みが増すのでしょう アクションも文句なし。

そして、ドニー・イェンが演じるイップ・マンの拳には自分の人生の体験が込められていると思う。こんなに彼のアクションで泣かされるとは…

 ドニーさん初心者で、今はドニー度数10ドニーぐらいだけど、SPLとかドニーさんが出ている作品を出来るだけ観て、ドニー度数100ドニー越えを目指したい。それぐらい、大好きな人物になりました。

フレームアームズ・ガール 1話 部屋と時間

4月から始まったアニメ『フレームアームズ・ガール』という作品が面白い。

フレームアームズ・ガールとは、コトブキヤから発売しているプラモデルであり、フレームアームズ(柳瀬敬之さんメカニックデザイン担当)を島田フミカネさん原案の女の子に擬人化させて立体化させて作られた商品(wikiか何かにもっと詳しく書いてあるので調べてください)

メカ+女の子(パンツが丸見え)のプラモデルのアニメ化である。

僕も名前は知っていたが作ったことは無いのでほどんど知識は無いのだが、アニメがとても面白かった。まだ2話までの放送ですが、1話が個人的にツボだったので気になった部分を書いてみる。

・あおちゃんの部屋と時間

物語は主人公である源内あお(以下あおちゃんと呼ばせていただきます)の一日から始まる。

冒頭、彼女が住むアパートの全体のカットから玄関、起床、歯磨き、朝食。

次は朝食を食べたあおちゃんが友人と電話をしている場面。

会話と同時に彼女の部屋も映るのだが、ここで両親の写真が背後に映る。

何気ない会話の中で両親の話が出てきた時、そこで後ろに映っている両親の写真が一瞬アップになる。

何となくこのアニメーションでは「両親が不在」であることが分かる場面。

その後一話(正確にはAパート)が日曜の午前中であることが、あおちゃんの一言と窓から観た外の景色のカットか一瞬入る事で明確になる。

ここまでの流れがとてもスムーズ。特に冒頭のあおちゃん起床から朝食までのテンポが心地よい。

その後にフレームアームズ・ガールズが送られてきて話が進むが、ここでもフレームアームズとあおちゃんの会話も見ていて楽しい。

省略で見せる部分と、この後の時間の経過を見せるためのカットを入れることで無駄の無いテンポになっていると思う。

それから会話シーンの中にも人物と窓のレイアウトが印象的に映り、あおちゃんが住んでいる部屋を見せる場面が多い。

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ちょっと引いて見せたり(ここでも窓が映る)


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このような横からのカットが多く映ったり

それから両親の写真を配置するレイアウトも印象的。
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両親不在の事も、海外赴任でアパートに一人で住んでいる女子高生って事が会話で分かるけど、両親がいないことに対してはそこまで重く考えないで回想を入れずに写真で思い出を語る場面もテンポが良い。あと両親不在って今時かなり思い切ってる気がしまうが、あえて重く描かず(今後また語られる可能性もあるが)無駄なシーンを入れないで物語がどんどん進むのが良いですね。

Aパートが終わる頃には夜になっていて、のシーンで窓から観た景色によって時間の経過を見せてくれる。
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冒頭で友達と電話をしている場面でも窓から観た朝の景色が同じカットで入っていました。この2つのカットがとても良かった。

当たり前だが「ちゃんと時間が経過しているんだな」ってこちらも理解出来るので、このようなカットをポンと置いて見せてくれるのが何だが嬉しい。あと繰り返し述べているが、無駄がなく物語の必要なシーンや会話をさりげなく演出していると思います。

 ・あおちゃんの服

Bパートはあおちゃんが登校しようとする場面がらスタート。新しいフレームアームズ・ガールが送られてきて新キャラ登場。なんか知らんが対決する展開になったり。

Bパートも部屋のレイアウトが印象的でした。それ以外でもあおちゃんの服が制服になっている!まぁ学校へ行くから当たり前か。

1話はあおちゃんがフレーム・アームズ達とワチャワチャしていたので「学校間に合わない!」って言って終わるんですけど、ここでも時間の経過が分かる描写ですね。

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ちなみに次の2話であおちゃんの私服が変化しているので、その辺もポイント高いです。どのくらいまで私服のバリエーションが増えていくのかも楽しみ。

あとフレームアームズ・ガールズのキャラクターは悪くないですが、あおちゃんが圧倒的に可愛いのでこ子を追っているだけでも面白いかもしれない。

第1話 脚本:赤尾でこ  絵コンテ&演出:川口敬一郎 作画監督:北川大輔

 

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

ルール

・2016年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

 

「話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

こちらの企画に参加させていただきます。

 

 ・魔法つかいプリキュア! 第1話「出会いはミラクルでマジカル!魔法のプリキュア誕生!」

脚本:村山功   絵コンテ&演出:三塚雅人  作画監督:松浦仁美   総作画監督:爲我井克美

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『魔法つかいプリキュア!』2話までの感想 - 氷の世界

  プリキュア伝統「手つなぎ」を見せて、そこに「手を伸ばす過程」を印象的に見せてくれた話であった。そこにシリーズへの期待や不安を感じることが出来た。

前作とは違った楽しみ方が出来ている『魔法使いプリキュア!』だが、選ぶなら1話。

 

 ・キズナイーバー 第7話 「七分の一の痛みの、そのまた七倍の正体に触れる戦い」

脚本:岡田麿里 コンテ:宮島善博、小林寛 演出:宮島善博 作画監督長谷川哲也、岩崎将大

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  キズナイーバーはキャラクターの表情、芝居がとても良かったと思う。それが一番良かった回。走り出す由多くんの作画と、牧の表情にグッと来た。

 

・ コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜THE LAST SONG  第24話「君はまだ歌えるか」

脚本:會川昇 

絵コンテ:黒川智之、大塚健石平信司松尾衡水島精二 

演出:大久保朋、菱川直樹 

作画監督:伊藤嘉之、小平佳幸、長谷部敦志、小田嶋 

 メカ作画監督:大塚健

 

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和製ウォッチメン…とまではいかないけど、個人的に凄く重要なシリーズ。

その最終回がとても良かった。作画も演出も素晴らしい。

脚本の會川さん自身の体験と想いが乗った話だと思う。

 

・ヘボット! 第3話「コワコワ~、はじめてのコワ話」

脚本:神山修一  絵コンテ:石平信司  演出:藤本義孝  作画監督:藤崎真吾、渡辺奈月
五十内裕輔、中谷友紀子

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 凄いテンポ。「一体自分は何を見ているのだろうか」という感情が一番大きかった3話。それ以降は多少ヘボット慣れしてきてある程度理解出来てきた気がする。

 

 ・デュエルマスターズVSRF 第27話「赤ちゃん対決っ! ミルクボーイたーくんVSおむつボーイかっちゃん」

脚本:小林英造  絵コンテ:中川聡  演出:伊藤史夫  作画監督:加野晃

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 プリキュアの裏番組。時々とんでもない事をしているが、こちらの話が一番すごかった。主人公が赤ちゃんになったり、ヒロイン(CV丹下桜)が授乳しようとしたり…

カードゲームの販促は出来ているのかわからないが、タカラトミーさんも時々全力でふざけるのでいいんじゃないでしょか。(一方その頃、大人向けカードーゲーム「WIXOSS-ウィクロス-」のアニメ『Lostorage incited WIXOSS』ではとてつもないバトルが続けられていた)

 

 ・ドリフターズ 第七幕  「カオスダイバー」

脚本: 黒田洋介  絵コンテ 演出:山内重保  作画監督:小林利充、羽山淳一

 

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  ドリフターズ山内重保組が参戦!

ヒラコー原作のアニメって難しいのかと思った所を、山内さんがアニメ的演出で魅せてくれました。本当にありがとうございます。

 

 ・ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第38話 「クレイジー・D(ダイヤモンド)は砕けない その2」

脚本:ふでやかずゆき  絵コンテ:追崎史敏  演出:加藤敏幸、村田光、津田尚克

作画監督:西位輝実、石本峻一、馬場充子、仲敷沙織、芦谷耕平、横山謙次、Shin Hyung Woo、Cha Myoung Jun

 アクション作画監督:三室健太、才木康寛、山田まさし

メカ作画監督:柳沢隆

総作画監督:西位輝実、馬場充子、石本峻一

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 原作付きのアニメの条件等、色々考える年でもあったが、ジョジョは原作を上手く昇華させていたと思う。38話はアニメ的演出と、原作のコマがそのまま出てきたようなカットがあり非常に濃い1話だった。そして原画に馬越さんが!4部の構成の上手さに気づかされた所も良かった。

 

・終末のイゼッタ 第3話 「天翔る剣 Das Schwert des Himmels」

 脚本:吉野弘幸 絵コンテ:藤森雅也 演出:根岸宏樹 作画監督:関根昌之、重田智(銃器・メカ) 総作画監督:山下祐

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 作品に一気に引き込まれた話。

戦場の見せ方(そこで戦う兵士、兵器)とそこに降り立つイゼッタの見せ方が絶妙。まだ戦い慣れしていないイゼッタの姿は可愛さと勇ましさを感じられた。当たり前だが早見沙織さんの演技が最高。余談だが、放送終了後の特番もかなり見応えがあって思わず「う…上手い」と言ってしまった。

 

NARUTO疾風伝 第478話(698話)「和解の印」 

脚本、絵コンテ、演出、黒津安明 作画監督:黒津安明、田中比呂人

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 自分が、NARUTOは青春の1ページだった事を改めて気づかされた話。

NARUTOのアニメは支えてくれた方の1人、黒津安明さんの素晴らしい演出によってNARUTOという作品を今まで追ってきて本当に良かったと思った。

 

・文豪ストレイドックス 第13話 「黒の時代」

絵コンテ:五十嵐卓哉 演出:浅井義之 作画監督:服部聰志

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 五十嵐さんと榎戸さんのマジックに驚かされた話。漫画とは別の外伝小説を、見事に映像化してくださったアニメスタッフに感謝。

 

・まとめ

 2016年はアニメに驚かされた年でもあった。TVシリーズもとても良い作品が多い。

ベストには入れなかったけど、『灼熱の卓球娘」『ViVid Strike!』等も全体的に良かった。

 来年のアニメも楽しみです。