アニメ ジョジョ4部の終盤が面白い
4月から始まった『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』が、あっという間に最終回を迎えようとしている。
最終決戦、吉良吉影の能力「バイツァダスト」と死闘を繰り広げた川尻早人、そして東方丈助達の話から目が離せない。
今回は、特に印象的だった36~38話について書いてみる。
36話
OPが特殊な演出になった。吉良吉影の能力に合わせての変更。まずこれが素晴らしい。
映像が逆再生になり、歌詞が2番に変更。
逆再生により、吉良吉影からの視点となっているように思える。
今までは、丈助達の視点でのOPだったが、逆になる事で吉良の勝利を予感させるような演出にもなっているだろう。しかし、丈助達が振り向く事で、彼らにはまだ希望がある。
歌詞の「別れの時さへ砕けぬ意志で~」 の部分
しのぶの前に現れる川尻吉良。逆再生になると川尻吉良がいなくなり、夫の帰りを待つ妻という見方も出来る。
さらに、早人がキラークイーンから解放、決意の表情。
36話は、早人が決意をして、吉良の殺害を実行するまでの話。
「神様、どうか僕に人殺しをさせてください」と願う早人。小学生にしては重すぎる。
殺害実行をする朝、母親を守ることを決意。
早人は「僕は愛されているのか」といった疑問を持っていた。
早人の母は、おそらく息子の育て方がわからない。もしくは、息子とどう接したら良いのかかわらないのだと思う。
一方、吉良吉影は作中で両親についての過去はほとんど描かれていないが、おそらく吉良の母親も同じだったのではないだろうか。
もしくはしのぶよりも酷かったのか。
一方的な愛情としての暴力が奮われていたのかもしれない。
父親も、息子へ干渉しなかったんじゃないかな。どう育てたらいいのかわからない、どう接したらいいのかわからない。
吉良吉影は父親を「その程度の存在」て見てなかった(後の描写から判断)、母親に愛されたかったんじゃないかな。ちょっと考えすぎか。
荒木先生は、悪役のバックグラウンドはあまり描かないと以前おっしゃっていたが、描かない事で想像の余地が広がる気がする。
37話
この話は少し不満。
映像、特に声が付いた事で原作で感じられなかった違和感があった。
原作は自分のペースで読めるけど、映像はどんどん進む。台詞の量の多さが目立っていた。
まぁ4部終盤戦は、極限の戦いであり、荒木先生自身も体調を崩されており、「どうやったら吉良を倒せるか」悩みながら描いていたようで。まさにジョジョ的な勢いと極限が合わさった部分だろう。
38話
今まで観てきたジョジョのアニメで一番良かった。
原作再現の限界を3部のアニメで感じていて、アニメと漫画は切り離して観ることを心がけていた。
しかし、38話は原作のコマがそのまま飛び出してきたようなショットが多くて震えた。コマ割りとかは流石に厳しいが。
そこに声優の演技、作画といったアニメ的演出が見事にはまっていたと思う。
億康の復活シーンなんてベタベタの展開で萎えそな所を、ここも丁度いい演出と、ノイズにならないような劇判、そして声優の演技によって素晴らしい演出になっていたと思う。改めて億康の高木さんと丈助の小野さんのキャスティングの素晴らしさを実感した。
そして原画に馬越さんが!西位さんがキャラクターデザインを担当すると聞いた時、馬越さんの参加を望んでいたが、まさか実現するとは…
まとめ
正直、こんなに4部にはまっているのに驚いている。原作読んでるときは「まー面白いなー」程度だったんでんだけど、アニメ観て4部の構成の上手さに気づいた。今更気づくことが多すぎた。
最後は、ジョジョ的にに言うと「凄み」で進んでる感じするけど、アニメでもその辺上手いことやってたんじゃないかな。
3部の2クール×2クールより、3クールで全部描き切る事の方がジョジョのアニメの構成としては正解な気がする。どうでもいいが3クールのアニメって傑作が多い気がするのは気のせいだろうか。
39話で終わってしまうのは悲しいけど、今まで見ることができてよかった。
マイベストエピソード7選
以前、インタビューでお世話になったぎけんさんの企画に参加します。
ルールは、
作品としてはベストに選ばないけど好きな話数をコンセプトに、アニメ作品の好きな話数を選出し紹介する企画です。
※ コンセプトは強制ではありませんので気楽に考えてください
・ 劇場版を除くすべてのアニメ作品の中から選出(配信系・OVA・18禁など)
・ 選ぶ話数は5~10個(最低5個、上限10個)
・ 1作品につき1話だけ
・ 順位はつけない
・ 自身のブログで更新OK(あとでこのブログにコピペさせていただきます)
・ 画像の有無は問わない
・ 締め切りは8月末まで
マイベストエピソード企画はじめました - 物理的領域の因果的閉包性
今回私は7つ考えました。選ぶ基準は「観て衝撃的だった」話を中心にしようと思います。
・宇宙をかける少女 第9話「 Q速∞」
脚本:樋口達人 絵コンテ&演出:京極尚彦 作画監督:藤井智之
お話しはギャグ回何ですけど、まさかの野球回。このアニメはSF作品で、主に宇宙が舞台になってるんですけど、今までの話を一旦止めて、キャラクターはそのままで1話使って野球をする話です。しかも、絵コンテと演出が、あの大ヒットアニメ、ラブライブ!の京極尚彦さん。おふざけ回は最近減ったなぁと懐かしく感じますね。
・ヨスガノソラ 第11話「ソラメクフタリ」
脚本:荒川稔久 絵コンテ:しまづ聡行 演出: 嵯峨敏 作画監督:清水勝祐、滝吾郎
落合瞳
禁断の兄弟のセックスがガッツリと描かかれています。抑圧されていたものが一気に開放され、境界を超えたお話しです。玄関でセックスをしている所を開けて見られるという印象的なシーンがありました。玄関を開けるという行為で、「境界を超える」という演出が際立っていた気がします。
・しゅごキャラ! 第29話 「キャラなり!?アミュレットエンジェル!」
脚本:小山知子 絵コンテ&演出:平尾美穂 作画監督:古田誠、松本卓也
いわゆる女児向けアニメで、当時は「子供向け」ってイメージがあったんですが、しゅごキャラ!はそういったイメージを覆してくれた大変良いアニメでした。
そんな中でかなり印象的だったのが、こちらの話。
主人公のあむ(CV:伊藤かな恵)と、このと時敵対してた歌唄(CV:水樹奈々)が変身して戦うお話ですが、そこにで歌唄の兄であり、あむが恋心を抱いているイクト(CV:中村悠一)が来ます。そしたら歌唄がだたこねて色々あった挙句最後に二人はディープキスをしました。兄弟で何やってんだ!?って朝から吹き出してしまい、かなり印象に残っています。
・瀬戸の花嫁 第20話 「男たちの挽歌」
脚本:上江洲誠 絵コンテ:影山楙倫 演出:唐戸光博 作画監督:松本剛彦
ギャグアニメにおける、声優さんの大切さを思い知った話です。
瀬戸の花嫁は、とにかく出てくる人物の声がハイテンションであり、それが2クール目からどんどんエスカレートしていた気がするんですよね。もちろん良い意味で。この話では三宅健太さん、村瀬克輝さん、玄田哲章さんの怪演に腹を抱えて笑いました。
・コードギアス 反逆のルルーシュ 第10話「紅蓮 舞う」
脚本:大河内一楼 絵コンテ:須永司 演出:三宅和男 作画監督:米山浩平
池田有 総作画監督:千羽由利子、中田栄治
初めて観た深夜アニメであり、初めて観たエピソードでした。
とにかく、物語のテンポの速さと、見せ場の多さに引き込まれました。
メカの見せ方、キャラクターの動かし方、が非常に上手いと思ったエピソードです。
・ハピネスチャージプリキュア! 第32話「いおなの初恋!?イノセントフォーム発動!」
脚本:高橋ナツコ 絵コンテ&演出:山内重保 作画監督:赤田信人
みんな大好き山内重保さん。プリキュアでは初代以降久しぶりの参加でしょうか。
山内さんが演出すると、山内さんのアニメになっちゃうんですよね。
でもこの話はとても良かった。いおなと裕哉の関係性を見せる演出がとても上手かった。
・少女革命ウテナ 第20話「若葉繁れる」
脚本:月村了衛 絵コンテ:橋本カツヨ 演出:桜美かつし 作画監督:たけうちのぶゆき
個人的に、オールタイムマイベストエピソードであり、篠原若葉という人物が愛おしく、悲しい、大好きなキャラクターになりました。
キャラクターの表情もベスト。全てが大好きです。
以上になります。中々決めるのが難しかったですが、とても選んでいるときはとても楽しかったです。ぎけんさんありがとうございました。
『SHARING』 共有と共感
篠崎誠監督の新作『SHARING』を観た。4月に2回(アナザーバージョン1回、本バージョン1回)そして、7月に再び期間限定で上映さたので観てきた。
篠崎誠監督のフィルモグラフィーを追うのはちょっと難しいというか、中々観れる作品が無いので比較とかは出来ないが、この『SHARING』は傑作だった。
東日本大震災以降の、我々が住んでいる日本をテーマにした作品であるが、物語の舞台がほとんど大学内で限定されている。先ほど書いた、「ドッペルゲンガー」と「予知夢」や、「夢の中でまた夢を見る」といった入れ子構造も特徴的である。
過剰と言ってもいいくらいの入れ子構造のせいか、「一体どこまでが夢でどこまでが現実なのだろう」と、観ているこちらの気持ちが揺さぶられる。
おそらく、観る人にとっては「ホラー映画」にも見えると思う。僕もそう思った。
「ホラー映画」って色んな意味で使われると思うが、本作は「建造物という空間使ったホラー映画」だと思う。
大学という限定された空間を、「ドッペルゲンガー」と「夢」の描写、そして不吉な「音」で不安にさせてくれる。撮影は立教大学で行われているが、大学内の「空間」が怖い。廊下の向こう側に立つ人、図書館から上の階のガラスを見上げると立っているもう一人の自分等…
黒沢清の新作『クリーピー 偽りの隣人』で、大学内での1カットで見せる印象的なシーンがあるが、それに近い厭な雰囲気に近い。
篠崎監督も、この「空間」を意識したと言っていた。
そんな厭な部分も続いて行く内に物語はとんでもない展開で幕を閉じた。こればっかりは観てから確かめてほしい。おそらく、今の日本に住んでいる人たちなら、絶対誰かしらが考えているだろう事。
3.11以降を描いた映画でもあり、ホラーでもある実験的な映画だが、本作の僕が傑作だと心を揺さぶられた事には、『SHARIG』とタイトルにもなっているように、「共有する事とは何か」という事を問いかけてくれたからだ。
何でもかんでも共有する事は良い事とは限らない。共有して共感する事っていったい何だろうか。というか「感情移入」ってそもそも何だろうか。つーか、共有とか共感とか感情移入とかって過剰になると息苦しいと思う。
僕が時々思う「他者」との関わり方の難しさ、どうしたらいいかわからないモヤモヤについて、答えではないが、何か、、全部じゃないけど、俺の心のモヤモヤが少しだけ、ほんの少しだけ解消されたような気がする。解消してまた考える繰り返しになるが…それでも本作は僕の感情を激しく揺さぶってくれた。
決定的な誤解を生んでしまうかもしれないけど、それでも「直接目を見て話せ」と訴えかけてくれるあの場面
あの二分割、あのショットはめちゃくちゃかっこよくて、めちゃくちゃ悲しくて泣いた。今のところ今年のベストカットであり、今年のベスト映画。
でも複数回観ると、めっちゃいいカットとちょっと退屈なカットの差が激しいような気がするが、その歪な感じも含めて好きな映画。傑作。
『文豪ストレイドックス』朝霧カフカ×綾辻行人×京極夏彦先生のトークショーに行ってきた。
2月3日、『文豪ストレイドックス外伝 綾辻行人VS京極夏彦』の発売を記念したトークショーに行ってきました。
「京極さんに綾辻さんまでが参加するトークショーなんてめったに観られない…」と思って乗りと勢い、あと文豪って作品がとても気になっているのでそのお話が作者から聞けたらいいなーなんて思って。
トークショーの流れとかは他で記事になってるのでそっち見てもらった方が早いですね。
私はトークショーで気になったポイントだけまとめてみますね。
1.朝霧カフカ先生によるキャラクターについての発言
今回の外伝小説のキャラクター設定は3行ぐらい書いて、その後春河先生に見せたら1発でビジュアル決まった。それからイメージを膨らませていった。他のキャラ(おそらく本編)もそう。
本編でも、お話よりもキャラクターを先に設定している。どうやらキャラクター重視で仕事しているようです。如何にキャラクターは活き活きとして描けるか、もっと言えば出て1ページでそのキャラクターを覚えてもらえるかを意識していると強調。
ちなみにアニメスタッフからも、春河先生のキャラクターは好評。
2.今回の外伝小説について
綾辻先生京極先生からは好評。綾辻先生は、クソみたいな作品だったら和やかに話していませんとおっしゃり心臓に悪かったです。
京極先生は、辻村さんのキャラクターを褒めていました。彼女のキャラクターを作った事で作品が上手く出来上がっているとの事。
朝霧カフカ先生のお気に入りのシーン:冒頭、滝シーン。ネタバレを避けるが、シャーロックVSモリアーティを意識して描いた自身のあるシーンとの事です(ここで自らハードルを上げる)
他、トークショーで面白かった話。
綾辻「しかしよく面識もなくこんだけ描けたなぁ」
カフカ「最初、担当の方からお会いするかどうか聞かれたんですけど、どういう方なのか聞いてやっぱりイメージで決めました。綾辻さんだったドSにしようとか」
京極「手心が加えられますからねぇ」
京極 「でも、今回の小説の本キャラが僕らでよかったよね。他のご存命作家だったらどうなってた事やら。」
綾辻 「名前は出しませんが、まぁ色々いますね(笑) 辻村さんは、女性読者が少し嫉妬するんじゃないかって言ってましたね。自分が高校生だったらこの辻村深月のキャラクターに殺意を抱いていたかもて言ってたよ。」
〜質問コーナー〜
質問1 もし異能が使えたら
カフカ 「異能が使えるだけで満足です!」
綾辻「寝ている間に原稿が出来ている」
京極「クマムシのようになりたい。とりあえず生きていて中々しなない。でも死ぬときは苦しまずに。」
質問2:この作家をキャラ化したら面白そうって人。お知り合いで。
綾辻「虫太郎で『黒死館*1』って思ったけど知り合いかぁ…迂闊な事言えないけどS田S司とか…(笑)」
京極「平山夢明 異能は恫喝と適当」
質問3:小説の続編はありますか?
カフカ「皆さんの反応次第ですね。でもこの流れだとほとんど決まってるようですね…」
ここで会場から大拍手
カフカ「ありがとうございます!!!」
・告知
カフカ「夏頃に小説4巻を出します。後は皆さん既にご存知だと思いますが、4月からアニメが開始します。シナリオにも参加していますのでよろしくお願いします!」
・まとめ(各作家からの近況も含め)
カフカ「元々サラリーマンだったんですけど、『何か描きたい』という思いがずっとありまして。思い切って会社を辞め、何の当てもなかった所を角川さんに拾っていただき、デビュー作がこのような人気が出て光栄です」
綾辻「これがデビュー作かぁ これから頑張ってね。」
この辺は綾辻さんの宣伝。
こんな感じですかね。カフカ先生は「今年は文豪イヤーにしたい」という〆に、不安と期待を感じてしまいましたが。
外伝小説のトークショーなので、アニメの話、原作の話は少な目でした。カフカ先生がちょっと触れたキャラクターの設定についてもっと掘り下げて聞いてみたかったですね。
カフカ先生の狙いは間違ってはいないと思いますが、個人的にもうひと押し欲しい所。何よりキャラよりストーリーの弱さが気になります。お話あってのキャラクター、キャラクターあってのお話だと思いますので、文豪は圧倒的にお話が弱い。滅多な事がない限り「キャラで押し切る」のは不可能だと思うんですよね。だからキャラクターも何だか薄く見えてしまう…
ただし、8巻9巻は悪くなかった(感覚が麻痺してきているからかもしれないが)。お話も整理され、キャラの見せ方も良くなっている。アニメ化決まったからなのか、脚本会議で榎戸さんから何か刺激をもらったからなのか…とにかくカフカ先生はかなり「若い」からどんどん吸収して伸びていってほしいです。これは春河先生の絵にも言える事かも。
2015年映画ベスト10
1.ガールズ&パンツァー劇場版
2.ワイルド・スピード スカイミッション
3.炎628
4.ミッション:インポッシブル/ローグネイション
5.アントマン
6.SW フォースの覚醒
7.マッドマックス FR
8.キングスマン
9.海街diary
10.シグナル
1位~3位はとても愛おしい作品でここは動かず。4位~はどれも好きな作品ですが変動するかも。
1位は個人的に良かった所を絞って感想書きました。
2位はブログ始める前に観たんですが、泣きすぎて大変なことになりました。目の失禁です。
3位は旧作なんですが、一応劇場で観たので入れました。あまりに衝撃的な作品でもあったので。これはみなさんに観てほしい作品。疲れるけどね。
4位~は特に感想書いてないですが、『ミッション・インポッシブル』は軽く書きました。
2015年凄い年でしたね。僕はガルパンにとどめ刺されて未だに引きずってます。
ミニシアター系の映画もたくさん観たかったんですけど、リピートしてみる映画が多くてなかなか時間が作れず。
来年はもう少し多く観たいですね。
3本立ての映画Go!プリンセスプリキュア を観てきた
プリキュアの映画を観てきました。先行上映、とプリキュアオールナイト内での上映だったので大きなおともだちに囲まれて観れたので安心しました。あとちゃんとライトも貰えました。
2回観て、自分の中で少し映画に対して整理出来たので感想書いてみます。
- 初の3本立て
今作はプリキュア映画初の短編、中編、長編の3本でストーリーが構成され、それぞれ、デフォルメされたキャラクターの3Dで描かれる短編、フル3Dで描かれる中編、メインである従来の方式で描かれた長編で分けられています。
プリキュアの映画って上映時間が短いんですよね。どのシリーズの映画も上映時間約70分です*1。しかし、今作は3本立てなのでそれぞれの上映時間が短編5分、中編20分、長編50分で分けられています。全体では75分といつもより長いですが、従来の長編は50分といつもより短いです。
この上映時間の短さは、作り手側の制約でもあり、「子供が観られる時間は70分が限界」という理由があり、これ以上には出来ないようです。なので、短い時間で、ストーリを進行させて、映画内のテーマを決めて完結させなければなりません。個人的にプリキュア映画の面白さの一つはこれですね。いかに短い時間で観客に伝えるかを毎回楽しみにしています。
今作は3本とも独立したストーリーですが、映画全体のテーマの1つである「ハロウィン」に関してはどれも取り入れています。
最初に上映される短編『キュアフローラといたずらかがみ』では、デフォルメされたキュアフローラが3Dで描かれており、台詞が無く「音」と「動き」だけで表現されています。ディズニーやピクサーの映画の本編が始まる前に上映される短編を意識した作りになっており、動きと音で表現された演出が見事でした。
次は長編が上映されます。従来の方式で描かれていますが、今回は50分と短いです。
そのせいか、「もう少し尺が欲しかった」「今までの映画に比べて地味だった」等といった大友達からの感想を目にする。実際、僕も1回観た時、長編に対して少し物足りなさを感じた。しかし2回観みると、短い時間でテーマをよりシンプルにして、さらに細かい演出の上手さを感じることが出来、これは長編の監督を担当した座古明史さんだから出来る事なのではないかと思います。
座古さんは、初代からプリキュアシリーズの演出を担当してきた人であり、スイート~ハピネスチャージまでのシリーズは関わってはいないですが、今作シリーズの方でも久しぶりにお目にする事が出来ました。
プリキュアシリーズを支えてきた重要な人物であるこらこそ出来る物語をよりシンプルにした「省略」と「プリキュアらしいテーマ」を物語内で上手く描かれていました。コンテについてはあまり詳しくないが、計算された演出で、物語内で、とある人物が、静かな雰囲気なのに、感情を変化させるシーンがお見事。そこに至るまで、主人公のはるかが言う台詞にも物語のテーマの一つを凝縮させたように感じます。
作画は見事ですね。これはどのシリーズも素晴らしいです。しかも今回の映画では香川久さんが作画監督で参加しており、座古さんとコンビを組んでいた『フレッシュプリキュア!』を思い出しますね。
最後に上映される中編『プリキュアとレフィのワンダーナイト!』では 宮本浩史さんの見事としか言いようがない3Dのキャラクターデザインと世界観でプリキュア達が大暴れしてくれます。これが一番良かったと言う人もいるぐらい、いつもとは違う物を見せてくれています。
日々進化しているプリキュアのEDの3Dが、20分動いてくれる夢のよな時間ですので必見です。
- 「プリンセス」と「テーマ」を考えてみる
今回は3本共に「ハロウィン」がテーマになっているのはわかるが、各作品事のテーマは何だろうか考えてみました。
まず、共通して言えるのが、タイトルにもなっている「プリンセス」が1つのテーマになっている事だと思います。
短編はプリンセスプリキュアであるはるかを中心で、彼女のちょっとした変化を描いていた。
長編では、物語の舞台「パンプキン王国」に登場する囚われの王女「パンプルル姫」が、絶対に諦めない強い思いを持ち、ピンチになったプリキュアを助ける役割を果たしていた。
中編の舞台である「パンプキングダム」のプリンセス「レフィ」が、自分の国を取り戻すべく、プリキュアと一緒に敵に立ち向かってゆく姿が描かれていた。
いずれも「プリンセス」が登場し、プリンセスプリキュアのテーマでもある「強く、優しく、美しく」の強さが描かれていたように見えます。
「プリンセス」と聞くと、階級があり我々とどうしても壁があるように思えてしまうが、「プリキュア」の中に落とし込む事で、身近な存在になり子供たちが憧れる存在になれるんではないかと思います。その辺は監督の座古さんやプロデューサーさんも物語を作る時に意識したとおっしゃっています。
なので、TVシリーズの「プリンセス」という要素を映画にも組み込んでいてとても上手いと思いました。
それから長編のもう一つのテーマとして「家族」があります。よりシンプルになったためか、メッセージとしてとてもわかりやすく描かれていました。
「家族」、特に父と母の存在はプリキュアの背景には欠かせないもので、近年それを意識した作りが多くなった気がします。今後も父と母については気になる所。
- より体験型を意識して
恒例となったペンライトを振ってプリキュアを応援する、一種の体験型に近い映画でもあるプリキュア映画ですが、過去作を観てどれも「ペンライトを振る機会が少ない」と感じていました。しかし、今作は3本立てのためか、ライトを振る機会が増えていたように思います。1本目の短編では動きに合わせて、長編はいつも通り最後に振るだけでしたが、中編はライトを振る展開ともう一つ「ライトが劇中の重要なアイテム」になっているのが印象的でした。
70分と短い中で難しい課題かもしれませんが、長編でもももっとライトを振る展開が多くなれば、小さなお友達も楽しめるんじゃないかなぁと思います。
まとめ
プリキュアの映画は毎年実験的な部分も観られ、今作も3本立てという実験的な作りで非常に興味深く観る事が出来た。もちろん、プリキュアの映画としてもしっかりと面白いです。
今後はどうなるかわかりませんが、今回の映画はプリキュア映画の新境地って感じがして凄くワクワクしました。
前作*2はかなり踏み込んだ作りで、ターゲットがギリギリ子ども向けな感じがして凄くドキドキしたんですが、今作は良いバランスだと思います。
そういえば、小さなお友達に混ざってまだ観てないので、この体験もしてみたい…
*1:ふたりはプリキュアSplash Starの映画は50分。
『炎628』 観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88にて。
8月2日『炎628』を観てきた。高橋ヨシキさん、田野辺尚人さんのトークショー付。
テアトル新宿で、8月1日~7日の間に行われたイベント内で上映した映画である。他にも『ソナチネ』や『オールド・ボーイ』等の傑作映画12本が上映されていた。
その中で一際目立ち、「傑作絶望シネマ」メインヴィジュアルになっているのが『炎628』の主人公の顔。
「傑作絶望シネマ」は書籍にもなっており、この顔が表紙にも使われている。
そんな『炎628』だが、これがまたとんでもない映画だった。
観てから数日、夢でこの映画が出てきたり、起きてる時もずっとこの映画のシーンが脳内で再生されていたりと、そんな衝撃的で、心に残る、「頭をハンマーで叩かれたような衝撃」が同時に襲ってきたのだ。
・あらすじ
1943年、ドイツ軍の占領下であった白ロシアで、1人の少年が家族と離れパルチザンに参加するが、若すぎるため戦闘に参加させてもらえず置いていかれてしまう。
そんな中、少年は一人の少女と出合う。互いに心を通わせるも、空爆にの被害に遭う。
なんとか2人は生き延び、少年の家に帰るが、そこには見るも無残な光景が広がっていた。そして、少年はその後まさに「生き地獄」を経験する…
本作の特徴は、兵士として戦う描写一切ない。少年が次々と遭遇する地獄のような光景が次々に襲ってくる。観ているこちらも、その場にいるかのような雰囲気にを味わえる。
この「その場にいるかのような雰囲気」を一層際立てているのが音の使い方。
劇中ほとんどと言っていいくらいのノイズ音、やリンチ映画の不協和音、ラジオの音が永遠と鳴り響き耳元からも入ってくる情報も不安を煽る。
また、モンド映画のような登場人物のアップが多いのも特徴的だ。
物語は後半になるに連れ地獄のような描写が多くなる。
中でも、村の教会に子供から老人まで押し込み、火炎放射で焼き尽くす場面が凄まじい。まず窓から火炎瓶を投げつけ、火炎放射器で焼き尽くす。その後ナチが銃で教会を撃ちまくる…「たのむからこれ以上は止めてくれ…」と次々と人間とは思えない行動をする。しかも彼ら、それを見て笑っているのが恐ろしい。
主人公は、「1人だけ外に出してやる」という理由でなんとか外に出られるも、その焼き尽くされる教会と人々を見させられる。
ちなみに火炎放射器は、直接人に当てると火力が強すぎて当たった瞬間身体がバラバラになるそうだ。そのような場面は直接映らないが、教会から聞こえる悲鳴が生々しい。
最後に後少年はナチに銃口を突き付けられ…一緒に記念写真を撮られる。その時の顔が上の画像だ。もはや「少年」とは思えない顔だ。
その後何日か経過し、やりたい放題やったナチが降伏してロシア人に人質になる。
もちろん全員殺されるが、死に際に放った言葉が
「子供から全てが始まる。生かしてはおけない。貴様らもみんな死ね。貴様らの民族に未来はない。共産主義は下等人種に宿る。絶滅させるべきだ。必ず遂行する必ず遂行する!」
である。何とも言えない気持ちになった。ただこの言葉が胸に刺さった。
ヨシキさんも仰っていたが、「差別等も、相手が人間じゃないと思った時に起こる事。そういう事はいつでも起こりうる。」
という、まさにこの大虐殺にも言える事じゃないだろうか。下手したら我々もこうなりうるのかもしれない。
物語の最後に、主人公の少年がヒトラーの肖像画を銃弾で撃つ。それと同時に実際の
ベルリン陥落からヒトラーの赤ん坊の頃の写真までの映像が巻き戻しで映される。
「子供から全てが始まる」という言葉がここで思い出した。
そして少年はパルチザンに加わり、彼らが森の中を歩いてゆくシーンで映画が終わる。
タイトルにある「628」とは「ベラルーシ村だけで焼き払われた村の数である」というテロップがエンドロール前に出てくる。(実際にはもっと多いとのこと)。
原題は『ИДИ И СМОТРИ』英題は『come and see』「来て見よ」という聖書『黙示録』の6節7~8行から取られた言葉である。映画の「この地獄のような光景を見ろ」って事ですかね。
とにかく強烈な映画であり、早速DVDを買った。特にこの8月という時期にこの映画を観る事が出来て本当に良かった。
余談だが
炎628、主役の子が撮影中トラウマにならないように催眠術師を呼んで催眠術をかけたが、その子は催眠術にかからない体質だったそうだ、
— コマヤシ (@mp719) 2015, 8月 4
との事。主役の子は催眠術にかかたふりをして撮影に挑んだそうです。
撮影現場も過酷で、実弾を実際に使っている。少年の肩をかすめるシーンがあるのだが恐ろしい…。*1
*1:ちなみにその主役の子は今でも元気に俳優活動を続けているそうです。