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『炎628』 観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88にて。

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 8月2日『炎628』を観てきた。高橋ヨシキさん、田野辺尚人さんのトークショー付。

テアトル新宿で、8月1日~7日の間に行われたイベント内で上映した映画である。他にも『ソナチネ』や『オールド・ボーイ』等の傑作映画12本が上映されていた。

 その中で一際目立ち、「傑作絶望シネマ」メインヴィジュアルになっているのが『炎628』の主人公の顔。

「傑作絶望シネマ」は書籍にもなっており、この顔が表紙にも使われている。

 そんな『炎628』だが、これがまたとんでもない映画だった。

観てから数日、夢でこの映画が出てきたり、起きてる時もずっとこの映画のシーンが脳内で再生されていたりと、そんな衝撃的で、心に残る、「頭をハンマーで叩かれたような衝撃」が同時に襲ってきたのだ。

・あらすじ

 1943年、ドイツ軍の占領下であった白ロシアで、1人の少年が家族と離れパルチザンに参加するが、若すぎるため戦闘に参加させてもらえず置いていかれてしまう。

そんな中、少年は一人の少女と出合う。互いに心を通わせるも、空爆にの被害に遭う。

なんとか2人は生き延び、少年の家に帰るが、そこには見るも無残な光景が広がっていた。そして、少年はその後まさに「生き地獄」を経験する…

 本作の特徴は、兵士として戦う描写一切ない。少年が次々と遭遇する地獄のような光景が次々に襲ってくる。観ているこちらも、その場にいるかのような雰囲気にを味わえる。

この「その場にいるかのような雰囲気」を一層際立てているのが音の使い方。

劇中ほとんどと言っていいくらいのノイズ音、やリンチ映画の不協和音、ラジオの音が永遠と鳴り響き耳元からも入ってくる情報も不安を煽る。

また、モンド映画のような登場人物のアップが多いのも特徴的だ。

 物語は後半になるに連れ地獄のような描写が多くなる。

中でも、村の教会に子供から老人まで押し込み、火炎放射で焼き尽くす場面が凄まじい。まず窓から火炎瓶を投げつけ、火炎放射器で焼き尽くす。その後ナチが銃で教会を撃ちまくる…「たのむからこれ以上は止めてくれ…」と次々と人間とは思えない行動をする。しかも彼ら、それを見て笑っているのが恐ろしい。

主人公は、「1人だけ外に出してやる」という理由でなんとか外に出られるも、その焼き尽くされる教会と人々を見させられる。

ちなみに火炎放射器は、直接人に当てると火力が強すぎて当たった瞬間身体がバラバラになるそうだ。そのような場面は直接映らないが、教会から聞こえる悲鳴が生々しい。

最後に後少年はナチに銃口を突き付けられ…一緒に記念写真を撮られる。その時の顔が上の画像だ。もはや「少年」とは思えない顔だ。

 その後何日か経過し、やりたい放題やったナチが降伏してロシア人に人質になる。

もちろん全員殺されるが、死に際に放った言葉が

「子供から全てが始まる。生かしてはおけない。貴様らもみんな死ね。貴様らの民族に未来はない。共産主義は下等人種に宿る。絶滅させるべきだ。必ず遂行する必ず遂行する!」

である。何とも言えない気持ちになった。ただこの言葉が胸に刺さった。

ヨシキさんも仰っていたが、「差別等も、相手が人間じゃないと思った時に起こる事。そういう事はいつでも起こりうる。」

という、まさにこの大虐殺にも言える事じゃないだろうか。下手したら我々もこうなりうるのかもしれない。

 物語の最後に、主人公の少年がヒトラーの肖像画を銃弾で撃つ。それと同時に実際の

ベルリン陥落からヒトラーの赤ん坊の頃の写真までの映像が巻き戻しで映される。

「子供から全てが始まる」という言葉がここで思い出した。

そして少年はパルチザンに加わり、彼らが森の中を歩いてゆくシーンで映画が終わる。

 タイトルにある「628」とは「ベラルーシ村だけで焼き払われた村の数である」というテロップがエンドロール前に出てくる。(実際にはもっと多いとのこと)。

原題は『ИДИ И СМОТРИ』英題は『come and see』「来て見よ」という聖書『黙示録』の6節7~8行から取られた言葉である。映画の「この地獄のような光景を見ろ」って事ですかね。

 とにかく強烈な映画であり、早速DVDを買った。特にこの8月という時期にこの映画を観る事が出来て本当に良かった。

 余談だが

 との事。主役の子は催眠術にかかたふりをして撮影に挑んだそうです。

撮影現場も過酷で、実弾を実際に使っている。少年の肩をかすめるシーンがあるのだが恐ろしい…。*1 

*1:ちなみにその主役の子は今でも元気に俳優活動を続けているそうです。