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『SHARING』  共有と共感

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篠崎誠監督の新作『SHARING』を観た。4月に2回(アナザーバージョン1回、本バージョン1回)そして、7月に再び期間限定で上映さたので観てきた。

篠崎誠監督のフィルモグラフィーを追うのはちょっと難しいというか、中々観れる作品が無いので比較とかは出来ないが、この『SHARING』は傑作だった。

 お話は、大学で社会心理学を教えるの瑛子(山田キヌヲ)が、東日本大震災予知夢を見た人を調査している。彼女は震災で死んだ恋人の夢をずっと見続けており、予知夢の調査をしてく内に、自身が予知夢や、ドッペルゲンガー見るようになってゆく。

一方、同じ大学で、演劇学科の薫(樋井明日香)は、卒業公演の稽古で、311をテーマにした公演を進めているが、彼女もこの芝居を初めてから同じ夢にうなされるようになる。本作はこの2人のキャラクターを中心に物語は進行する。

 

  この映画、東日本大震災以降の、我々が住んでいる日本をテーマにした作品であるが、物語の舞台がほとんど大学内で限定されている。先ほど書いた、「ドッペルゲンガー」と「予知夢」や、「夢の中でまた夢を見る」といった入れ子構造も特徴的である。

過剰と言ってもいいくらいの入れ子構造のせいか、「一体どこまでが夢でどこまでが現実なのだろう」と、観ているこちらの気持ちが揺さぶられる。

 おそらく、観る人にとっては「ホラー映画」にも見えると思う。僕もそう思った。

「ホラー映画」って色んな意味で使われると思うが、本作は「建造物という空間使ったホラー映画」だと思う。

大学という限定された空間を、「ドッペルゲンガー」と「夢」の描写、そして不吉な「音」で不安にさせてくれる。撮影は立教大学で行われているが、大学内の「空間」が怖い。廊下の向こう側に立つ人、図書館から上の階のガラスを見上げると立っているもう一人の自分等…

黒沢清の新作『クリーピー 偽りの隣人』で、大学内での1カットで見せる印象的なシーンがあるが、それに近い厭な雰囲気に近い。

篠崎監督も、この「空間」を意識したと言っていた。

そんな厭な部分も続いて行く内に物語はとんでもない展開で幕を閉じた。こればっかりは観てから確かめてほしい。おそらく、今の日本に住んでいる人たちなら、絶対誰かしらが考えているだろう事。

 3.11以降を描いた映画でもあり、ホラーでもある実験的な映画だが、本作の僕が傑作だと心を揺さぶられた事には、『SHARIG』とタイトルにもなっているように、「共有する事とは何か」という事を問いかけてくれたからだ。

何でもかんでも共有する事は良い事とは限らない。共有して共感する事っていったい何だろうか。というか「感情移入」ってそもそも何だろうか。つーか、共有とか共感とか感情移入とかって過剰になると息苦しいと思う。

僕が時々思う「他者」との関わり方の難しさ、どうしたらいいかわからないモヤモヤについて、答えではないが、何か、何か、全部じゃないけど、俺の心のモヤモヤが少しだけ、ほんの少しだけ解消されたような気がする。解消してまた考える繰り返しになるが…それでも本作は僕の感情を激しく揺さぶってくれた。

決定的な誤解を生んでしまうかもしれないけど、それでも「直接目を見て話せ」と訴えかけてくれるあの場面
あの二分割、あのショットはめちゃくちゃかっこよくて、めちゃくちゃ悲しくて泣いた。今のところ今年のベストカットであり、今年のベスト映画。

 でも複数回観ると、めっちゃいいカットとちょっと退屈なカットの差が激しいような気がするが、その歪な感じも含めて好きな映画。傑作。